日本共産党からの回答
最終更新日:2000.06.21

「クルマ社会の見直しに関する公開質問状」に対する回答

2000年5月30日
日本共産党

問1)について
 1999年の交通事故死者は9600人、死傷者は105万9403人と、大変深刻で心痛む事態が続いています。政府のような、あいまいな姿勢と目標ではなく、交通事故の死傷者を限りなくゼロに近づける長期目標と、それに近づけるための段階ごとの計画をきちんと持つことが重要です。日本共産党はかねてから、人命尊重がなにものにも優先されるべきであるとの立場にたった交通安全対策と交通安全施設整備・充実、2重3重の安全対策を求めています。

問2)について
 歩行者、自転車乗車中の交通事故死傷者の減少を減らすためには、人と車の分を徹底することが重要と考えています。この点で、ご指摘のように住宅地や商店街への車両の進入規制はきわめて重要であり、日本共産党はかねてから同様の主張をおこなってきました。

問3)について
 お年寄り、子どもたち、障害者などの歩行の安全確保は、国民みんなの安全確保になります。問2へのお答えでもふれたように、人と車の分離の徹底の立場から歩道の整備が重要です。かつて第1次交通戦争の時期に交通事故死者を半減させた教訓として、政府自体が「安全施設の整備の量的拡大と投資効果の大きさをあげることができる」(1987年度交通安全白書)とのべています。国や自治体の道路投資の重点を、大型公共事業の高速道路などから交通安全施設に転換することこそ求められています。
 同時に、今日では、傷害をもつ方々が使いやすい歩道づくり、車イスで歩ける街づくりに力をいれていく必要があります。

問4)について
 日本共産党としては、交差点の安全対策には次のことが必要だと考えています。
・歩行者が安心して渡れる交差点にするため、スクランブル方式や、歩行者と右・左折車の分断など交差点内での歩行者と車の完全分離。
・お年寄り、こども、障害者が青信号なら安心して横断できる特別の対策(信号の時間その他を含む)。
・立体交差や交差点の構造の改良。
・関係交通安全施設の整備。
・住民の要求に誠実に答えるための体制、組織の整備。

問5)について
 交通事故を起こした場合の補償や処罰の問題は、基本的には、それぞれの違反行為にふさわしい量刑や補償が必要だと思います。
 補償の問題は、自賠責保険における補償額の問題、無責事故とされて保険金がもらえなかったり減額される問題など多くの問題があり、その見直しが必要であると考えます。
 刑罰の強化の問題に関して、運転者がその責任を自覚すること、事故をおこした場合、法律にしたがって厳正な措置をすることは当然のことです。ただ、営業用車両の場合の運転者の労働条件、運行管理、過積載問題など企業の責任を含めて考えることが重要です。

問6)について
 自賠責保険の再保険制度が廃止され、民営化されれば、保険料の引き上げだけでなく、政府のチェックがなくなるため適正な保険金の支払いが確保されなく恐れがあります。また、強制保険でなくなるため、アメリカのように無保険者が増えることが必至です。自賠責保険の民営化をやめ、再保険制度を維持すべきです。そして現在、自賠責保険の運用益を活用しておこなっている重度後遺障害者などの治療、介護を充実すべきです。

問7)について
 免許取得の制度に関しては、例えば、指定自動車教習所の教習について、危険回避技能教習、夜間教習をはじめとして、その内容の改善が必要だと考えています。また普通免許所持者に対する原付の講習なども義務化するなど、全体として教習の充実をはかるべきです。
 免許所持者に対して、免許更新時の講習、或いは応急救護教習義務化以前の免許取得者等に対する応急救護教習の実施なども制度化し、受けやすくする体制整備を進めるべきです。また、高齢化社会のなか、高齢ドライバーに対する参加・実践型運転者教習や運転適性診断なども必要になっています。日本共産党は、こうした問題について国会でもとりあげてきました。

問8)について
 学校における交通教育、交通安全教育については、今日の車社会という現実を考えるならば、学校における交通安全教育の拡充は必要だと考えます。若者にたいする運転者教育については、2輪免許の路上講習、原付免許における講習制度など、その充実をはかるべきです。免許の年齢については、これまでの制度の歴史や事故と年齢の関係など、幅広い角度から総合的に検討されなければならない問題だと考えます。

問9)について
 わが国では、1960年ころからモータリゼーションが本格化し、以後、政府のモータリゼーション政策の展開のなかで保有自動車台数の著しい増加の一方で、公共交通機関は切り捨てられていきました。また、保有自動車台数の増加と比例するように交通事故も増加しています。
 日本共産党は、早くから政府のモータリゼーション野放し政策を批判してきました。そして公共交通機関の整備をすすめ、車の総量をおさえることなしに交通事故の減少はありえないと主張してきました。
 さらに、車の増加は交通事故にとどまらず、環境の問題でも、交通弱者の移動の自由の確保のうえでも大きな障害になっています。この意味からも、鉄道、バスなど公共交通機関の役割をきちんと認識し、その利便性を高め、安くて安心な交通機関として発展させます。

問10)について
 尼崎公害訴訟における最高裁判決は画期的なものです。これまで、道路のもつ社会性、自動車のもつ輸送の役割から、ともすればその必要性だけが強調され、大気汚染、健康被害や騒音問題がないがしろにされてきました。
 尼崎のほかにも道路沿線の公害問題、山岳道路の開通にともなう森林被害など道路に起因する公害問題は枚挙にいとまがありません。政府は、この最高裁判決をしっかり受けとめ、大気汚染、健康被害や騒音問題などの対策に真剣に取り組むべきです。

問11)について
 最高裁が示した自動車走行による振動と騒音は近隣住民の受認限度を越えた違法行為であるとの判決は当然のことです。
 従来から公害行政については、公共性の名の下に、また、技術的理由などにより、当然あるべき数値より低い基準や達成目標になるなどの対応も見られました。今日の社会では、環境を犠牲にするなど許されることではありません。

問12)について
 日本共産党は、年間50兆円にものぼる巨額の公共事業の大盤振る舞いを批判してきました。なかでも道路建設はその典型の一つです。道路建設は、公共事業に占めるシェアが大きいだけでなく、ガソリン税、自動車重量税など5兆円を超える道路特定財源という〃自動増殖装置〃があります。無駄なゼネコン型公共事業を大幅に削ると同時に、特定財源税度を廃止し、一般財源化しなければなりません。公共事業は、福祉・暮らし型を中心に切りかえ、道路建設は、街づくりや環境などとの両立を基本にすべきです。
クルマ社会を問い直す会