建設省要望書

最終更新日:1999.10.30


クルマ優先社会の改善を求める要望書

建設大臣 中山 正暉 殿
                  1999年10月14日
                  クルマ社会を問い直す会


 私どもは、今日のクルマ社会において、特に子どもや高齢者、障害者をはじめとする社会的弱者が絶えず交通事故の危険にさらされ、死傷させられている現実をたいへん憂慮しています。また、多くの人々が排ガスによる健康被害を受けていることや、公共交通の著しい衰退により移動の自由を奪われていることも、深刻な問題ととらえています。これらは、憲法に保障された国民の基本的権利を脅かす問題です。このような現状は、自動車の持つリスク(加害性・公害性)に対する対応策が充分にとられないままに、人の移動も物流も自動車に依存する社会システムが推し進められてきたことに原因があると、私どもは考えます。

 そうした観点から、今の道路・交通行政を根本から見直し、かつ、早急に具体的な改善策を図っていただきたく、次の点を要望いたします。



(要望項目)

1. 道路の歩行者安全対策を優先的に推進してください。
2. 歩行者・自転車・公共交通優先型の町作りを推進してください。
3. 大規模道路建設推進施策を見直してください。



(項目別要望内容)

1.道路の歩行者安全対策を優先的に推進してください。

(1)「歩道設置必要延長」とみなす道路には、早急に歩道をつけてください。

(2)「歩道設置必要延長」と見なされない道路にも、危険な道路は無数にあります。幹線・準幹線級の道路の場合には、それらをあらたに「歩道設置必要延長」と認定してください。

(3)補助的道路・生活道路などの幅員が小さく、充分な幅の歩道が設置できない道路の場合は、一方通行化・袋小路化をはかる、花壇・樹木・ベンチなどを路上に置いて道を蛇行させるなど、物理的にスピードを出せない構造にする、自動車の乗り入れを制限する、等の対策を、道路管理者としてとってください。

(4)対歩行者事故を防ぐ策として、生活道路や横断歩道付近へのハンプの設置を推進してください。

(5)市民参加型の「交通安全総点検」事業を、一般市民への広報をより広めて、推進をはかってください。



2.歩行者・自転車・公共交通優先型の町作りを推進してください。

(1) コミュニティーゾーンやコミュニティー道路の建設をさらに推進してください。コミュニティーゾーンは、対象区域の条件の枠を広げて、小学校を中心とした小区域でも形成できるようにしてください。

(2) 公共交通の利便性を高め、利用者を増やす対策として、バス専用レーンの増設や、市街地におけるトランジットモールの設置を積極的に推進・支援してください。

(3) 自家用車から公共交通への乗り換え誘導策として、パークアンドライドやロードプライシングの導入を推進・支援してください。パークアンドライドは、駐車場の建設が逆にそこまでの自動車利用を高めてしまうことのないよう、導入前の動向・導入による影響を充分に検討したうえで行なうよう、事業者に指導してください。



3.大規模道路建設推進施策を見直してください。

 高速道路・高規格道路の新たな建設は、自動車利用率をさらに高め、その結果交通事故をさらに増やし、また、自然環境を破壊し、排ガスによる大気汚染に拍車をかけます。また、道路建設の分担金は地元自治体の財政を圧迫しつづけています。高速道路の6割が赤字の現状も踏まえ、新たな建設についての根本的な見直しを求めます。

クルマ社会を問い直す会