2011年12月4日

内閣府 税制調査会 会長 安住淳 様
内閣府 税制調査会 専門家委員会 委員長 神野直彦 様
民主党 税制調査会 会長 藤井裕久 様

 

自動車取得税・自動車重量税廃止に反対する緊急声明

クルマ社会を問い直す会
世話人代表 杉田正明

 

 民主党税調が自動車取得税及び自動車重量税を廃止するよう政府・政府税調に要求したと報道されています。私たちの会はこの廃止要求に反対であることを表明します。民主党政権の政策として、この2税廃止を取りやめることを要求いたします。

 私たちの会は、交通において生命の安全・健康の保持を最優先し、物理的に弱い立場にある歩行者次いで自転車の交通環境の整備を優先し、さらにクルマを利用できない交通弱者・移動制約者の交通・移動の可能性を保障するために公共交通を私的交通に優先させる交通社会の実現を求めております。
 国土レベル・地域レベル・都市レベルのいずれにおいても、自動車への依存を引き下げ、鉄道(貨物鉄道を含む)・路面電車・バスなどの公共交通へのシフトをはかる政策が実現されることを強く願っております。クルマを利用できない交通弱者が、国民のおおむね3割前後存在すると推計できるなかで、公共交通の衰退が各地で起きていることは嘆かわしいことであると考えております。

 クルマ利用から公共交通へのシフトを促進する税制こそ必要であり、クルマの需要を喚起する・クルマの利用を促進する方向の税制改正は行うべきではありません。まずこの点から2税廃止に反対します。

 道路財源の一般財源化が行われて以降、手軽に入る統計がないので近年の状況が確認できないのですが、一般財源化が行われる前までは、道路整備は、地方の道路整備単独事業を中心に、道路特定財源だけでなくかなりの割合で一般財源を投入してなされてきました。おそらく現在もその状況が基本的に続いているだろうと推測します。道路整備は自動車利用者が負担する自動車関連の諸税(かっての道路特定財源)だけですべて賄える規模で行われているのではなく、その他の一般財源をも投入して為されていることをまず確認すべきです。そうした状況下で上記2税を廃止することはもってのほかであると私たちは考えます。
 それだけではありません。自動車は多くの外部不経済・外部費用(自動車利用者が自己の負担無しに他者にもたらす不利益)を発生させております。代表的には交通事故被害、排ガスによる喘息など呼吸器疾患被害、騒音被害、CO2排出による地球温暖化に伴う被害、道路建設による自然・生態系の破壊、道路建設による生活環境の破壊、競合関係にある公共交通需要を減らすことによる公共交通の衰退などです。
 自動車利用者は、本来、こうした外部不経済・外部費用、社会にもたらしている迷惑・被害相当の負担をも現在の自動車関連諸税に上乗せして負担すべきであると考えます。
 自動車の外部不経済・外部費用の金額評価については、生命・健康・自然環境等について評価方法に難しい課題があり、また私どもの会員の中にも特に生命について決して金銭や便益とは等価にならないもの・決してこれらと較べてはならないものと考える会員が多く存在しますが、ここであえて政策を議論するために外部費用の推計に触れます。これについての包括的な推計作業はあまり見かけませんが、2001年公表の兒山真哉・岸本充生両氏による推計(「運輸政策研究 2001 Summer」)では、1km走行するごとに、乗用車は29円、小型トラックは40円、大型トラックは132円相当の外部費用を発生させているそうです(中位推計)。この推計は先に挙げた外部費用のすべてを推計しているわけではありません。また現時点で評価し直せば違った数字になる可能性はあります。しかし、いずれにしても、こうした走行1kmあたりの外部費用にガソリンや軽油1リットルあたりの走行可能距離を掛け算すれば明らかなように、1リットルあたり数百円の上乗せ課税が必要となっている事態なのです。

 自動車取得税・自動車重量税の廃止については、上記のように、自動車利用者が自動車走行に際して本来負担すべき費用を充分負担していないことから反対致します。

 尚付言すると、自動車産業を活性化する方向での経済活性化ではなく、鉄道や路面電車やバスなどの関連産業が元気になる方向での経済政策、国土・地域・都市政策を推進してくださるよう要求致します。

 以上

 

本声明については以下の団体からも賛同をいただいております。
空色自転車市民の会
環境NGOエコ・クリエーターズ・クラブ
持続可能な地域交通を考える会
青空の会



「クルマ社会を問い直す会」