民主党 代表 鳩山 由紀夫 殿

 

高速道路無料化及び暫定税率撤廃についての意見書

 

2009年7月25日

クルマ社会を問い直す会(代表 杉田正明)
環境NGOエコ・クリエーターズ・クラブ(代表 鈴木一之)
自転車スイスイ(代表 渡辺 進)

 

 貴党は、この度実施される衆議院議員総選挙に際して、作成されるマニフェス トの中に、首都圏を除く高速道路の無料化及びガソリン税等の自動車関連の暫定 税率の撤廃を盛り込まれる意向であることを知りました。このことについて、私 たちは環境破壊や税負担の不公平などの社会問題をさらに深刻化するものである という理由で再考を強く求めます。

1 高速道路無料化及び暫定税率撤廃は、地球環境の破壊をさらに進めます

 自家用車が、1人を1km運ぶのに出す二酸化炭素量は、鉄道の約9倍、バスの 約3倍と公共交通機関と比べて圧倒的に多くなっています。そのほかにも窒素酸 化物や浮遊粒子状物質などの有害物質を大量に排出します。今後「エコカー」の 割合が増えたとしても、高速道路無料化及び暫定税率撤廃が実施された場合は、 自動車走行量が大幅に増え、また高速道路の渋滞がいっそう激化することになり、 このような有害物質の排出が大きく増加することが考えられます。実際に、環境 自治体会議・環境政策研究所の調査によると、「高速道路1000円乗り放題」 が実施された今春の大型連休の2週間だけで二酸化炭素排出量が66万トンも増 加しました。
 高速道路無料化及び暫定税率撤廃は、明らかに地球環境の破壊、特に地球温暖 化を進めることに大きく貢献することになります。これは地球温暖化抑制に力を 入れようとされている民主党の方針とも大きく矛盾します。

2 高速道路無料化及び暫定税率撤廃は公共交通機関の経営を強く圧迫します

 高速道路無料化及び暫定税率撤廃が実施されれば、多くの人々が鉄道やバスな どの公共交通機関の利用をやめて自家用車の利用に変わることが考えられます。 すでに今春から実施されている高速道路料金の値下げによって自動車の走行量が 増える一方、公共交通機関の利用者は大幅に減少し、廃業に追い込まれたフェリー 会社もあると聞きます。高速道路無料化及び暫定税率撤廃が実施されると、自動 車と比べて環境破壊や事故による人命損傷などの危険性が遙かに少ない公共交通 機関の経営を強く圧迫し、多くの労働者の雇用を脅かします。

3 暫定税率撤廃は自動車利用者が本来負担すべき費用を不当に軽減します

 確かに、これまで暫定税率が道路特定財源として存在したために、無駄な道路 が数多く建設されてきたことは事実です。しかしそのことが暫定税率を撤廃する 理由にはならないのではないでしょうか。
 日本では、自動車利用者が道路事業への総投資のすべてを支払っているわけで はありません。自動車を直接利用しない人も負担する一般の税金によってまかな われている部分も小さくないのが現状です。その他にも、自動車は交通事故、排 気ガスによる呼吸器疾患、騒音、気候変動、道路建設による自然破壊、混雑、公 共交通機関衰退による自動車を直接利用しない人々の交通弱者化など第三者に補 償なしに不利益を強いています。即ち外部費用を発生させています。
 自動車利用者は第三者へ強いている外部費用と道路事業の未負担分を追加的に 負担すべきであり、むしろ課税を強化することが課題となるはずです。暫定税率 の撤廃など論外です。
 自動車関連の税は外部費用課税として明確に位置づけ直し、その税収は、自動 車の走行によって不利益を被っている第三者への補償もしくはそれに替わるもの に使うべきです。
 なお、兵庫県立大学の兒山真也氏らの研究に基づくと、乗用車は1km当たり 29円、東京大学の金本良嗣氏らの研究に基づくとガソリン車は1km当たり1 3円の外部費用を発生させているとの報告があり、ガソリン1リットル当たりに 換算すると、それぞれに約270円、約120円程度になります。本来、現行の 課税にこの程度の金額が上乗せされるべきです。

(担当・クルマ社会を問い直す会世話人・林裕之)


「クルマ社会を問い直す会」